LEDヘッドライト

今話題のアダプティブハイビームがすごい!
投稿日:2016.11.28 その他

■先行車や対向車ありでもハイビームが可能な革新的ライト
アダプティブハイビームは、先行車や対向車の有無に関係なく、常にハイビームで走行ができるヘッドライトシステム。
自動車のハイビームを複数の光源で構成し、個々の光源をコントロールすることで配光を制御します。
このシステムは、光を感知するセンサー技術とLEDヘッドライトの登場で可能になった装備です。
先行車や対向車のドライバーに眩惑を与えず広い場所を遠くまで照らせるライトとして、今後の普及が期待されています。
それでは、具体的にアダプティブハイビームについて説明していきます。
目次
テクノロジーが可能にした、次世代のハイビーム
アダプティブハイビームは、光センサーとLEDライトの登場が可能にした画期的なハイビームシステムです。
ロービームに比べて遠方まで明るく照らせるハイビームは、それだけ前方の状況を早く認識するのに役立ちます。
進行方向の障害物や人などを早く認識することは、自動車の安全運転の基本でもあります。
このところ、各メディアで“自動車の夜間走行はハイビームが基本”との啓蒙がなされています。 しかし、多くの自動車が行きかう日本の市街地や高速道路では、ハイビームに比べてロービームの使用時間が圧倒的に 多くなっています。それは、ハイビームが先行車や対向車のドライバーを強く眩惑するからです。
アダプティブハイビームは、このような状況でも相手方に眩惑を与えない、
画期的なライトシステムです。
このシステムは、ヘッドライトのハイビームモジュールを複数の光源で構成しています。 それぞれの光源には照射する場所が細かく割り振られており、先行車や対向車があれば、 その部分だけに投光を行わないようになっています。
このシステムがあれば、ハイビームで遠方を照らしつつ、先行車や対向車のドライバーには眩惑を与えないという、 矛盾するような配光が可能になります。常に進行方向の遠方が明るくできるので、ロービームに比べて状況の 把握が早く行え、より安全なドライブが可能になります。

オートハイビームとは大きく異なるシステム
自動車のヘッドライトでは、ハイビームとロービームを自動で切り換える“オートハイビーム”が徐々に 普及を始めています。しかし、アダプティブハイビームは、これとは大きく異なるシステムです。
オートハイビームも、センサーによって先行車や対向車の存在を認識します。しかし、オートハイビームは、 単なるハイビームとロービームの自動切り換え機能でしかありません。先行車や対向車がいる場合にはハイビーム そのものをやめるので、常に先行車や対向車が存在する都市部でしか運転をしない人にとっては、あまり意味のない 装備となる場合もあります。
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これに対してアダプティブハイビームは、先行車や対向車が常に存在する都市部や郊外でも有用な装備といえます。
都市部や郊外では夜間でも出歩く人が多く、自動車以外の自転車や小動物の飛び出しにも気を配って運転を行う必要が
あります。
他の車の存在に配慮しつつ遠方に投光できるアダプティブハイビームは、これらの早期発見に大きな
助けとなります。

センサーの感度と制御プログラムが重要
アダプティブハイビームシステムで重要な位置にあるのが、先行車や対向車を認識する光センサーです。 このセンサーが正常に機能しないと、システムは正常に起動せず、逆に他車に迷惑な装備となります。
特に、対向車の存在を認識するセンサーは重要です。対向車と自車との位置関係は、自動車が走行するにつれて
刻一刻と変化します。つまり、ハイビームの照射を行うべきではないポイントが逐次移動することになります。
これは先行車についても同様ですが、対向車の位置は先行車の位置に比べて変化量が大きいのが特徴です。
このため、より細かくスピーディな投光制御が必要になります。
アダプティブハイビームシステムでは、車両の前方(多くはフロントウィンドウ上部)に先行車や対向車を 認識するための光センサーを搭載しています。このセンサーと、センサーからの入力を処理する制御プログラムの 出来/不出来がアダプティブハイビームのシステムとしての使いやすさを大きく左右することになります。

自転車と歩行者に対する配慮が今後の課題
夜間の安全性に対する期待度が大きいアダプティブハイビームですが、いくつか課題も残されています。 筆頭に挙げられるのが、自動車以外に対する対応や配慮です。
たとえば、このシステムでは基本的にはヘッドライトを持たない対象物に対しては投光を除外しません。 このため、人間に対してはハイビームを照射することになります。また、自動車に比べてヘッドライトの光量が 少ない自転車に対しても同様です。
通常の夜間運転であれば、歩行者や自転車などが前方から向かっている場面では、ハイビームではなくロービームを 使用します。それが、相手方に対する配慮となるからです。
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しかし、現在のアダプティブハイビームでは、歩行者や自転車を認識するのは困難です。このため、 ややもすると歩行者や自転車に不快な印象を残す懸念があります。また、眩惑によって相手方が事故を起こす 危険性も皆無ではありません。アダプティブハイビームは、このような場面を想定し、システムの仕組みを 理解して使用する必要があります。
また、センサーの感度や設定によっては、街灯やネオンなどを自動車のライトと誤認識する可能性もあります。 この場合、当然ながら正しいハイビームの投光ができなくなることが想像できます。

未来型ヘッドライトシステムのキーテクノロジー
懸念される課題があるとはいえ、アダプティグハイビームはこれまでのライトシステムでは不可能だった配光を可能にする、 重要な技術に違いはありません。
自動車のライトシステムとしては、自動ハイビームを筆頭に多くの機能が普及し始めています。 アダプティブハイビームは、その動きの中にあって、中心的な位置を占めるコアな技術です。
今後は、この高度なハイビーム制御機能を軸に、ハンドルの切れ角や走行スピードなどを考慮した、 より高機能なライトシステムに発展する可能性があります。それは、つまり夜間走行時の安全性や快適性が 高まるということを意味します。センサー技術を含む、今後のテクノロジーに期待したいところです。
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最新のアダプティブヘッドライトでもまだ完ぺきではない
アウディの「マトリックスLEDヘッドライト」、マツダの「アダプティブヘッドライトシステム」などを皮切りに、現在では多くのメーカーで採用されている環境適応型ヘッドライト。歩行者や自転車に対する配慮はもちろん、対車においてもまだまだ改善する余地があります。
例えば、国産車において先駆け的な存在である、マツダのアダプティブヘッドライトの場合、「対向車によくパッシングされるから、普段はオフにしている」というユーザーの声があるようです。
マツダのアダプティブヘッドライトは、カメラが対向車の光を感知してから、スパッと素早く切り替わるのではなく、ややゆっくり切り変わり、タイムラグが発生してしまいます。
そのため、状況や切り替わるタイミングによっては、ハイビームのままと勘違いされてしまい、パッシングされてしまうのです。
上記でもお話したように、警察やメディアでは、夜間の交通事故件数の減少を狙って、ハイビームの使用を推奨しています。
ですが、日本の市街地において、ハイビームを多用することに抵抗感を持っているという方も多いでしょう。
それもそのはず、アウディやBMWといった欧州車メーカーで、積極的にヘッドライトの性能強化に取り組んでいるのにはわけがあるのです。
ドイツやフランスといったヨーロッパ諸国は、日本よりも街灯の無い、いわゆる田舎道がまだまだ沢山あり、車の密度も日本とは大きく違うのです。
2017年の日本の乗用車保有台数は、およそ6千100万台であるのに対して、車発祥の国であるドイツの乗用車保有台数は4千600万台。
日本とドイツの国土はほぼ同じであるため、人だけでなく、いかに車が密集しているかがわかると思います。
先述したように、センサー感度や、より緻密な制御などの機能が進化していけば、日本でもアダプティブヘッドライトの評価は向上していくかもしれません。しかし、現状において言えば、日本のユーザーの評価は賛否が分かれているようです。
これからは魅せるヘッドライトの時代
車全体のテクノロジーの進化と共に、オイルランプから始まった車のヘッドライトも、「白熱球→ハロゲン→HID→LED」と大きな進化を遂げてきました。当初は夜道を照らすという基本的な目的からスタートし、HIDが標準化されたころには、より明るく効率的なヘッドライトが求められるようになり、LEDヘッドライトが登場。
そして、LEDが普及した現代では、LEDヘッドライトの持つ設計の自由度を活かし、デザイン性に富んだ「魅せるヘッドライト」の需要が高まっています。
ベンツのスリーポインテッドスターや、BMWのキドニーグリルのように、LEDヘッドライトが放つ「光の形」が、そのブランドを象徴する存在となりつつあるのです。
BMWのエンジェルアイや、アウディのデビルアイ、ボルボのトールハンマーなど、凝ったデザインのヘッドライトを持った車種が多くなり、今後は輸入車だけでなく、特徴的なヘッドライトを持った国産車も増えていくことでしょう。
近年では、LEDよりもさらに鋭い光を放ち、より遠くまで照らすことのできる「レーザーヘッドランプ」が実用化され、BMW7シリーズなどの、一部の高級車にオプションで市販されるようになってきました。
ヘッドライトは人間で言えば目のような存在であり、車の印象を大きく左右します。
これからは、性能やデザインなど、さらにバリエーション豊かなヘッドライトを持った車種が増え、今以上に、車を選ぶ時の基準の一つになっていくのではないでしょうか。